
総長・研究科長メッセージ
Diana Khor

お茶の稽古を始めた際に楽茶碗を学びました。16世紀から続く楽家は現在15代目で、「黒楽」「赤楽」の2種類を基本とします。しかし、楽美術館などで数百年前の茶碗が今も違和感なく使え、「黒」「赤」だけでも多彩な表現があることに驚かされます。楽茶碗の当主は伝統を守りつつ独自の作品を生み出す使命を担い、その歴史は創造性と持続性のつながりを示しています。
現在の社会はVUCA(変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)の時代と言われており、創造、つまり「イノベーション」が、守るべきものを守りながら発展していく鍵となります。これは伝統工芸に限らず、ビジネスの世界にも当てはまるでしょう。もちろん、常に革新的なアイデアを生み出せる天才もいますが、私たちは、イノベーションを生み出す人材は育成できると考えています。
本学のイノベーション・マネジメント研究科では、皆さんの多様なニーズに応える柔軟な学びを提供する3つのコースを設置しています。いずれのコースでも、マネジメントの基盤をしっかりと固めるカリキュラムに加え、創造性を高めるスキルをプロジェクト型学習(Project-Based Learning, PBL)を通じて習得できます。これにより、ビジネス界でイノベーションを起こす人材の育成を目指します。
玄場 公規

今日「イノベーション」という言葉は広く使われるようになりました。日本経済を成長させるため、社会をより良くするためにイノベーションが必要であることは間違いありません。ただ、イノベーションを創出するためには高度なマネジメントが必要です。どれだけ素晴らしいアイデアがあっても、革新的な技術があっても、それをイノベーションとして普及させるためには高度なマネジメントが不可欠です。イノベーションの定義は様々ですが、顧客の問題解決が重要であると指摘されています。ただ、近年、そもそも、顧客の問題が何であるのかが全く分からないということも良く言われています。ビジネススクールでは問題を探索する方法など様々な理論・ツールを教えていますが、何よりも、教員のみならず、異なるバックグランドを持った学生同士の議論が新しい問題を見つけることに極めて有用です。この点、本研究科は、多様な経歴の学生が集まっています。例年、学生同士の年齢差は最大40歳程度あり、また、会社経営者、個人事業主、大手企業の中堅幹部など就労形態も多種多様です。行政機関の方や士業の方もいて、本当に様々な業種を経験した方々が多く、専門性が多様です。入学された皆さんは、活発な議論を楽しんでおられます。
本研究科は、社会人向け専門職大学院として長年のノウハウの蓄積があります。2020年以来のコロナ禍においても、積極的にリアルの対面講義と遠隔講義を併用するなど柔軟に対応してきました。実は予期せぬ効果として、遠方にお住まいの方や仕事が大変忙しい方でも講義が受けることができたと高い評価を得ています。また、本研究科の最大の特長であるプロジェクトメソッドでは、実践的な課題を明確にした上で、その解決策を考え出して実行することを目的に実施しており、実務に直接役立つ能力を磨くことができるMBAだと自負しております。意欲的な社会人の方々に教室でお目にかかれる日を楽しみにしています。