
修了生紹介
修了生紹介
1 年で10年分のイノベーティブな能力を修得
経営学観点からも患者にアプローチ
栃木県出身。太田医療技術専門学校臨床工学科卒業後、臨床工学技士として防衛省防衛医科大学校病院に入省し、臨床・研究・災害派遣医療(日本DMAT)に従事。その後、血液透析室副室長に就任し、腎不全患者に対する人工透析治療に携わる。長期治療で苦しむ患者の現状を知り、今後は経営学の観点から患者へのアプローチも必要と判断。既存の医療従事者の立場に縛られない新しい知見やスキルを習得するためIM 研究科の門を叩く。

私は、長年、人工透析患者の治療に携わっています。そこで見てきたのは、多くの患者が長期治療により就業などに様々な制約が発生していること。そのため日常生活は圧迫され、将来への希望を見出しにくくなっている厳しい現実でした。「これからは医学の側面からではなく、経営学の観点からも患者へのアプローチが必要となる」。そう確信し、IM 研究科で学ぶ決断をしたのです。
現在、医療においてイノーベーションの必要性は高まっていても、それは主に技術面に集中しています。医療技術革新は素晴らしいことですが、それを扱う我々医療従事者の意識も革新的でなければなりません。今後、日本は世界に類を見ない超少子高齢化社会に突入し、国の医療費は増大する可能性が非常に高く、既存の医療経営では崩壊すると言われています。必然的に医療に携わる者には「経営の知識と患者が望む医療を的確に提供できるマーケティング分析の技術」が求められるようになっていくでしょう。しかし、普段の業務を行う上で、医学の知識は学べても他の知識やスキルを身に付けるのは困難であり、働きながら短期間で多くのことを学べる環境と実践力を身に付けられる場は多くありません。ところが本研究科は「1年で10年の差をつける」を最大のコンセプトとして掲げており、我々医療従事者のような夜勤や当直がある社会人においても、より効率的かつ集中的に学習し実践に活かせる能力を身に付けることができます。さらに、組織イノベータのみにとどまらず、日本ではまだ数少ない医療イノベータを目指す院生にとって「プロジェクト」のテーマに医療ビジネスや組織改革の課題を設定できることも大きな魅力です。私は、その課題を作り上げる過程で様々な教員と先輩や多くの起業家からアドバイスを受け、多面的視点で考えながら、新規性の高いイノベーティブな能力を磨くことができました。
さらに、学友には様々な分野で活躍している方が多いため、新たなる刺激と知識を得ることができ、同時に互いに切磋琢磨することで、素晴らしいネットワークと人脈を構築することもできました。ここで学ぶことで、卒業後もこのネットワークと人脈を最大限に活かし、組織内改革や起業を目指す際には、具体的なアドバイスを得られるチャンスもあると手応えを得ています。
現場経験とデジタル活用技術を武器に
企業のDX を手掛けていきたい
大阪府出身。関西大学大学院で工学修士を取得。大手電機メーカーの産業プラント関連のエンジニアリング部門で国内外向け設備開発や建設プロジェクトに従事。業界全体が既存のビジネスモデルからDX※による事業転換を模索する中、DX をリードできる人材への転身を決意。MBA 特別コースに進学し、プロジェクトではIoT 活用によるコンクリート製品工場の生産プロセス改善の実証試験を実施。特定ビジネス課題解決型優秀プロジェクト賞を受賞。

私は大手電機メーカーに入社してから、24 年間、半導体事業・液晶事業・化学プラント事業など国内外の様々な事業フィールドを渡り歩いています。研究・開発・設計・エンジニアリングという技術系業務だけでなく、営業、海外拠点運営、合弁会社立上げなど、技術系以外の業務も多数こなし、まさにモーレツ社員として働いてきました。しかし現在、日本の製造業には国際競争力の低下を肌で感じます。これからは、デジタル活用による事業転換が必須であるとの課題意識を持ち「自らがDX 人材への転身」を図るために、IM で学ぶことにしたのです。
短期集中型のカリキュラムにより、集中してすべてに興味を持って取り組むことができ、多様な業務経験から経た断片的な事柄を総合的に結びつけられた実感があります。本年度はリモート中心と特殊な環境となりましたが、通学時間が少ない利点を生かし、必須科目以外でも多くの講義を受講。論理的思考力やICT 知識のさらなる強化につなげることができました。IoT、AI、画像処理といったデジタル活用技術をより自分の武器にしようと、現在も学外のオンラインセミナーで継続して学び続けています。例年なら学外の人脈形成にも注力できるのでしょうが、そこは無理強いせず、専門性を磨くことに専念。プロジェクトの成果を今後に生かそうと考え、IoT によるコンクリート製品工場の生産プロセスの改善につながるシステムを製作し、現場で実証試験まで行いました。学会への論文発表も2 件行い、実践力が求められているとの手応えを感じていますし、今後のビジネスにうまくつながっていくものと期待しています。また、1 年間という限られた時間軸の中でアウトプットを出す良い訓練ができた手応えも感じています。 もう一つ私が求めたのは、コンサルタントして独立するための実践力です。そこで診断実習、プロジェクト、各講義でのグループワークに力を入れました。幅広い年齢層と多様なバックグラウンドを持つメンバーと意見交換することで、自分にはない発想や知見に触れることができたのは、とても良い刺激になりました。同窓生との絆も深まり、卒業後の連携の場として、IM 総研のDX研究部会を発足。今後も仲間とDX 実践力を高めていく研究活動を継続していくつもりです。
「賢く失敗する勇気」と「諦めない心」
意欲的な姿勢で新しい未来を切り拓く。
宮崎県出身。外資系ホテルに勤務した後、外資系生命保険会社に入社。2017 年1 月より執行役員となる。カスタマーサービス部門の担当を経て、現在は総務にて社会貢献、D&I、企業理念を担当。2019 年イノベーション・マネジメント研究科2 年制に入学する。プロジェクトでは、本ワサビの消費拡大をテーマに研究を発表。ビジネスプラン型優秀プロジェクト賞受賞。

企業人としては、上司や部下に恵まれ幸運な人生を送っていましたが、ゆくゆくは地域や社会に役立つ事業を行いたいと考えていました。そんな時、IM は、実務経験やコンサルティング経験のある複数の教授陣から多面的な指導が受けられること、学生も経営者や企業の役員が多いと知り、2 年制での入学を決めたのです。1 年では、春学期に戦略、マーケティング、人的資源管理など基礎科目を中心に受講し、夏期集中や秋学期で専門科目と応用科目を選択。2 年では、プロジェクトに生かせる科目を中心に学びました。その中でも影響を受けたのは、小川教授のビジネスイノベーター育成セミナーです。その後のゼミでの指導も通して、自分自身の価値観を見つめ直し、自分らしい独自のリーダーシップとは何かに気付くことができたと感謝しています。
実践面のプロジェクトでは、村上教授のスタートアップ戦略論で「早く・安く・賢く失敗する大切さ」を学んだことが大きいですね。中間発表の頃、解決策に行き詰まっていた私は、村上教授に「インスタで売ってみたら?」とアドバイスをいただきました。仕事でも感じたことのない不安に襲われながら「失敗することを躊躇してはいけない」と、EC サイトを構築しSNS 広告を作成。年末年始の休みを返上してテストマーケティングやインスタグラム更新を行ったことで、熱意が生産者に伝わり「ここまでやってくれる人はいない」と言われ、事業化を決心できました。
現在、国産本わさびの普及を目的とした一般社団法人設立の準備をしています。定款の作成やウェブサイトの構築では、本科で出会った同期や先輩方からもアドバイスを頂き、構築先も紹介いただいています。日本の食文化の形成に重要な役割を果たしているわさびですが、その美味しさは消費者に十分に伝わっていません。本物のわさびは、まろやかな甘味があり、その後にすっとした辛味が鼻に抜け、食材の持ち味を引き立て、料理の味に深みを与えます。私は、食べる人と作る人をつなぎ、多くの人が本わさびを楽しみ、豊かな食生活を楽しめるサービスを提供していきたい。「意欲を持ち最後まで諦めずに取り組めば、新しい未来を切り拓くチャンスはきっと得られる」このIM で得たこの確信が、私の原動力となっています。
女性ドライバーの採用・育成と新たなビジネスモデル構築が使命
東京都出身。法政大学経営学部経営学科卒業後、タクシー・ハイヤー事業を展開する大和自動車交通(株)入社。営業所副所長、総務部人事課長、総務部長を経て2014年より取締役執行役員。現在は常務取締役執行役員総務部長として総務・人事・労務・情報処理、運輸安全マネジメント業務を管掌する。

齋藤さんが企業内イノベーターになることを決意したのは、常務取締役に就任した2015年のこと。次代を担う人材を育成するためにはまず自身を含む経営陣が意識改革を行い、喫緊の課題である人的資源管理について知見を深めることが必要と考え、MBA取得制度(授業料会社負担)を確立。一期生としてIMへ入学した。
「社内外のステークホルダーをつなぎ、プロデューサー的な役割を担える人材を育成することが目的ですが、業界の発展と会社の成長に貢献できる真の経営者に私自身がならなければ、という気持ちも強く、出身校である法政で学び直すことにしたのです」強く印象に残っている授業としては『人的資源管理論』(藤村博之教授)を挙げる。
「人材不足のなかで志を同じくする人をどう集めてどう育てるか。そこがポイントでしたので藤村教授の授業は特に集中して入っていきました。最初からぐいぐいと引き込まれる内容でしたので、履修を始めて間もなく行動を開始し、社内で女性のタクシードライバーを集めるためのチームを立ち上げました」
ターゲットエリアは、女性の運転免許保有率が高い東京・多摩地区。立川事業所を拠点にハローワークへの公示や採用サイトの刷新を行い、会社として初めて花柄のタクシーも実現。そしてIM修了までに、ドライバー候補として4名の女性を採用した。
「その数に満足はしていませんが、中高年の男性で成り立ってきた業界で、新たな一歩を踏み出すことができたと実感しています」齋藤さんの改革意欲はIM修了後にいっそう高くなっており、現在は事務職社員のモチベーションアップを図るための仕組みづくりに取り組んでいる。目標は新たなビジネスモデルの構築だ。
「タクシー業界において、会社単体で従来のビジネスモデルを根本的に変えることは不可能に近い。ですから労働生産性とサービスの向上に務めながら、タクシー・ハイヤー以外の柱を作るためのアイデアを公募し、人材と資金を投入するのが現実的と考えています。IMで得た人脈を最大限に生かして挑戦を続けていきたいですね」
沖縄県の経済的自立に寄与するために中小企業診断士になった
沖縄県出身。琉球大学工学部電気工学科卒業後、大手電機メーカーグループのSI企業を経て世界的なソフトウェア開発企業の日本法人に入社。法人顧客に対するICT活用のソリューションアドバイザーを務め、2013年に退社。現在はカナイ経営支援研究所代表として経営とICTに関わるコンサルティングサービスを提供。システム開発会社アーティサン(株)の取締役でもある。

IM修了後は沖縄へ戻ってカナイ経営支援研究所を設立。経営とICTに関わるコンサルタントとして、中小企業の事業承継支援、泡盛ブランド『誇酒(こしゅ)』の製造販売を軸とする酒造所の再建、沖縄の官民一体事業の設立などに関わってきた比嘉さん。沖縄県の経済的自立に寄与するために大手企業を辞し、中小企業診断士の資格を取得して4年。法人化も実現した今、その表情には自信と充実感が満ちている。
「県内の中小企業のICT活用度を高め、生産性の向上を図るのが私の使命。経営者に対してICT技術やサービスを導入すれば課題を解決できるという“気づき”を与え、システムの設計、構築、開発支援コンサルティングを行う。それが今のビジネスでベースは固まってきましたが、底上げという点ではまだまだ。首都圏に本社を置く大手SI企業の二次請けというポジションから脱し、自力で課題解決策の提案と導入ができるITベンダーを増やしていくことが、沖縄県の経済的自立につながると考えています」
そんな比嘉さんがIMでの1年間を振り返り「もう二度とないかもしれないと思えるほど、濃密な時間でした」と語るのが、現実の中小企業に対する経営診断実習だ。比嘉さんは製造、流通(この2業態は固定)に加えて小売、サービス、貿易の3業態を選択し、主体的にグループワークに打ち込んだ。
「保険代理店の営業職、IT企業のエンジニア、小売店の販売員など、異なる業界でプライドを持って仕事に取り組んできた社会人が集まり、本気で独立を目指して取り組むグループワークは、毎日が真剣勝負。経営者や役員にヒアリングを行い、人事、販路拡大、後継者育成などの課題を抽出して、100ページに及ぶ報告書にまとめる過程では喧嘩腰で意見をぶつけ合うことも珍しくありませんでした。でも、だからこそ、それまで縁がなかった中小企業の実態を知ることができ、経営者の立場で課題を探って解決策を提案できるようにもなった。今、大きな会社で仕事をしている方にこそ飛び込んでみてほしいですね。価値観が大きく変わると思いますよ」
一切の甘えを捨てて、最後まで諦めずに取り組めば人生が変わる
栃木県出身。大学卒業後は地方銀行に勤務し2009年に退職。同年に入学したIMではプロジェクト・メソッドで最優秀賞を受賞。修了後に中小企業の事業承継を中心とするコンサルティング会社(株)サクシードを設立。以後8年で450以上の企業を支援し次世代の経営者育成にも取り組んできた。著書に『売上1000万円を稼ぐ! 「地域一番コンサルタント」になる方法』(DO BOOKS)がある。

2010年4月、栃木県宇都宮市で創業した(株)サクシードのコンサルティング部門における主力事業は、中小企業に対する事業承継支援。このビジネスモデルのベースは、代表取締役社長の水沼啓幸さんがIM(中小企業診断士養成課程)在学中、プロジェクト・メソッド(タイトルは『55歳以上の中小企業経営者に必須な健康診断・事業承継ドック』)として構築したものだ。
「テーマは久保田章一教授(現・浜田市長)と『マーケティング』の小川孔輔教授と相談して決めました。銀行員時代から、手続きが煩雑で不透明な事業承継はいずれ国家的な課題になると感じていたこともあり、『銀行員のキャリアを生かすためにも後継経営者にターゲットを絞るべき』と言われた瞬間、気持ちが固まりました」
水沼さんは『事業の魅力』『経営者としての資質』『税制・法律』という3つの視点から事業承継の課題を明らかにする診断方法を考案。それを中心に作成した独立後の事業計画書をブラッシュアップするために在学中に会った人は、中小企業の経営者、金融機関や商工会議所の職員をはじめ、400名を超えた。
「大学院生という立場を最大限に利用してアポイントを取り、修了後に起業することを含めて話をさせていただきました。一番の収穫は、コンサルタントが自社の事業計画を中小企業の経営者に提案し、アドバイスをお願いすることが新たな顧客獲得につながると分かったこと。それは地域で一番のコンサルになるために有効な方法で、起業を考えている方に伝えたいノウハウのひとつです」
こうして完成したプロジェクト・メソッドが最優秀賞を受賞したことも、優秀な人材と顧客を獲得する上で後押しになったという。
「毎年、当社が主催する後継経営者向けのセミナーに小川教授が登壇していただけるのも、在学中の成長を見ていていただけたからだと思います。起業して8年、社員11名の会社に成長させることができたのもMBAと中小企業診断士の資格取得ではなく、会社を作り人を集めることを目標にしたからこそ手にできたと信じています。一切の甘えを捨てて、最後まで諦めずに取り組めば人生が変わる。IMとは、そういう場所だと思います」
電設資材総合商社の3代目社長として海外ビジネスの拡大を目指す
宮城県出身。東海大学教養学部国際学科卒業後、中部一円に営業拠点を持つ樹脂メーカー系商社に就職。営業職として4年間経験を積み、後継者として仙台に本社を置く電設資材の総合商社に入社。営業、企画職を経て現在は常務取締役(兼東京営業本部長)として海外事業の拡大に取り組む。

「アメリカ留学でMBA取得を目指す学生たちの姿を見て自分の甘さを痛感した時から、3代目として社業を引き継ぐことになれば大学院で経営を学ぼうと決めていました。父は難色を示していましたが、東北での再生可能エネルギー分野への進出の遅れを東京で取り戻して販路を拡大すると説得し、1年コースに入学しました」
昼間は東京・新木場の事務所で仕事をして夜は市ヶ谷で学び、週明けに仙台に戻って会議に出るというスケジュールのなか、最も大きな影響を受けた授業として佐藤さんが挙げるのは米倉誠一郎教授が教鞭を執る『ビジネスリーダー育成セミナーⅡ』だ。
「教授が質問は?と聞いたら必ず挙手して、当たったら発言する。それができない人はグローバル社会が認めるリーダーにはなれないという考えは衝撃的でした。授業には一代で日本を代表する企業を築いた著名な経営者を招くことも。ビジネスに対する覚悟の差を思い知り、打ちのめされたこともありましたね」
プロジェクトでは、日本の電設資材流通システムを東南アジアに効率よく導入するプランについてまとめた。
「大手ゼネコンが手掛けるテナントビルや製造工場等の建設現場に日本製の電設資材を提供するためのガイドブックになればと思って作成しました。自社のビジネスに直結する数値データを実勢値で盛り込んだため、優秀プロジェクト選考会への参加は辞退しましたが、論文を高く評価していただいたので満足しています。ファミリービジネスである電設資材卸売業の実力値を底上げして、利益率を高めるための施策や経営者に必要なスキルをバランスよく身につけることができたので、本当に充実した1年でした」
多くを学んだために修了後の実務では理想と現実の差に愕然としたという佐藤さんだが、現在は課題解決に目処をつけ、グローバルな舞台で活躍できる人材の採用に燃えている。1カ月のうち半分は東京にいるのでIMで得た人脈もフルに活用しているようだ。
「指導教授以外の先生からもフィールドワークや実ビジネスで役立つ海外現地法人や政府組織のキーマンを何人も紹介してもらうなど、修了後のフォローが手厚いのもIMの魅力ですね」