修了生紹介

Introduction of Graduates

修了生紹介

IM での生活は、知識やスキルの習得だけでなく、人脈づくりや自己の成長にもつながります。修了生に IM での生活を振り返ってもらいました。

IMの“プロジェクト・メソッド”でイノベーションの一歩先へ

井口 卓郎 さん 2022年度修了 (1年制)
大学卒業後、証券会社に入社。その後外資系保険会社へ入社し、日本での開業準備を経てマーケティングの責任者として金融機関等のアフィニティマーケットを開発。その後損害保険会社の準備会社を設立し、代表取締役として当局への損害保険会社の事業免許申請を経て開業。これらのノウハウを提供すべく企業向けマーケティングサポート会社を創業。2022年ビジネスプラン型優秀プロジェクト賞受賞。

 私のキャリアにおいては、ビジネスの現場が学びの場でもありました。プレゼンテーションはもちろん事業計画の立て方やマーケティングも実践から学んできました。そういった中、ある新規ビジネスのプロジェクトで思うような結果を残せず初めて大きな壁を感じました。その時IMの存在を知り、ビジネス課題の課題解決に向け自分自身が足りないアカデミカルな部分、つまり「理論」という武器を身につけたいと思い入学を決めました。
 さまざまな講義を受講した中で最も影響を受けたのは「経営戦略論」です。1つの企業をピックアップし、経営理念から現在のビジネスの実態、そして将来の可能性、講義での経営戦略の学びと、普段のビジネスでは関わることのない業界のエリートの皆さんとの忌憚のない意見を交わし合うグループワークを繰り返すことで、擬似的ではあるものの新規ビジネスのプロジェクトとして実践力を身につけていくことが出来ました。
 そのIMでの学びの集大成がプロジェクトです。指導教員である玄場教授のご指導のもと、取り組もうとするビジネスの新規性や発展性、実現性などの精度を上げつつ、より伝わりやすいものとするため、玄場教授を筆頭に山﨑教授など様々な教授方に助言をいただき発表資料に繋げていきました。
 プロジェクトとして完成したものを、現在は新規事業として実現すべく活動を進めています。まさに「なぜ起こったかを明らかにすることではなく、今起こっていることを解決すること」というIMのプロジェクトで培った実践力を実務にぶつけているわけです。
 今後起業家の一人として過去の慣習や規制に囚われている市場の常識を打ち破るような破壊的改革にチャレンジしていきたいと考えています。
 IMで得た実践知をもとに多くの仲間とイノベーションの一歩先を目指して参ります。

本気度の高い仲間と切磋琢磨できるから成長できる

宇都宮 基行 さん 2022年度修了 (MBA特別プログラム)
東京都出身。上智大学法学部卒業後、鈴与株式会社作業部オペレーション課に入社。港湾荷役の現場監督責任者として、物流の知識や現場マネジメントを学ぶ。その後経営者になりたいという想いから、営業力を身に付けるため株式会社リクルートライフスタイルに転職。チームリーダーなどを経てから父が経営する会社に入社。実際に経営をするためには、生半可な知識ではだめだと考え中小企業診断士を目指すべくIMへ入学。2022年度特定ビジネス課題解決型優秀プロジェクト賞受賞。

 私の在籍したMBA特別クラスは一年間でMBAと中小企業診断士両方とも取得できるカリキュラムになります。そのため、非常に密度が濃く、1年間で最も成長できると考えて入学しました。
 印象に残っている講義は、2つあります。1つは、丹下教授の「創業・ベンチャー起業論」です。こちらは、チームでビジネスアイディアをブラッシュアップし、実務家の方にプレゼンするというものです。また、ビジネスアイディアの選定も全員の前でピッチを行い、投票によって決められたビジネスアイディアを磨いていくというものです。ビジネスアイディアを磨く段階では、市場調査を行うために、ユーザーにヒアリングを行うだけでなく、競合になりうる企業にもアポイントを取りヒアリングを行うことで磨いていきました。会社員として働いているとビジネスアイディアを考える機会はほとんどなく、また実務家の前で発表する機会もありません。実際に起業する際に重要なことを座学だけでなく、実務も交えて勉強することができ、非常に有意義なものとなりました。また、その中で組んだチームメンバーと起業する予定となっています。
 2つ目は、米倉教授の「ビジネスリーダー育成セミナーⅠ」です。業界のトップ経営者が実際に来校し、講義をしてもらう授業です。こちらは、学生が経営者に対してその企業の今後の戦略を発表し、フィードバックをしてもらう授業となります。トップ経営者が何を考え、どのように意思決定しているのか肌で感じるとができ、非常に学びを得ました。

チームによる起業を支えられるコンサルタントになる

 今必要だと感じている点は、起業家支援、特にチームによる起業の支援です。起業を促進する動きは強まっていますが、まだまだ足りていない現状です。特にチームによる起業は、業績と正の相関が出やすい傾向にあるにもかかわらず、起業家チームの形成に対する支援はほとんどありません。
 私のプロジェクトでは、豊田教授ご指導のもと、チームによる起業を促進するメソッドの開発に取り組みました。その中で感じたことは、「スキル」「経験」「性格」など様々なものが混ざり合うことで適切なチームが出来上がり、しっかりとした支援がなければ、そのようなチームが組める可能性は低いということです。
 今後は、短期的には自身による起業、長期的には起業家の支援を行っていきたいと考えています。まずは自分自身で起業しノウハウの蓄積をした後、起業支援コンサルタントとしてサポートしていきたいと考えています。
 プロジェクトを通じ、学びだけでなく今後自分が取組んでいきたい内容に直に触れることができるのもIMの魅力だと感じています。

IMの生きた学びにより、俯瞰力を養う

鴨狩 大和 さん 2022年度修了 (2年制)
千葉県出身。大学卒業後、自動車メーカーグループ企業を経て父の経営する食肉加工メーカーに入社。営業、生産、海外事業に従事し、現在は専務取締役。また、2022年から公益社団法人千葉市観光協会の理事も務め、観光振興による地域活性化を推進している。

 IMに入学を決めた理由は、まず中小企業に強い大学院であったことです。中小企業が既存ビジネスを変革、発展させるために必要な思考、スキルを身に付けたいと考えていた私にとって、IMの中小企業に焦点をあてたカリキュラムや環境は最適であると感じました。また、IMには実際に企業経営をされてきた先生方もおられ、企業経営の実務とアカデミックの融合について、生きた学びを得ることができる環境も魅力的でした。進学を考えていた当時は、新型コロナ感染症の影響が社会全体を変えようとしている時であり、まさに私自身、また当社においても「イノベーション」が不可欠だと強く感じ、入学を決めました。
 特に印象に残っている講義は、山﨑教授のファイナンスです。私はファイナンスというと漠然と「金融」に関することが浮かび、難解なイメージがありました。しかし、山﨑教授に学んだコーポレートファイナンスは、企業経営の意思決定において重要な要因となる様々な「価値」の算出に必要な知識と実務に付随することが学べるものでした。ミニケースや演習・演算、そして山﨑教授の実務での経験談を交えた講義は、非常に実践的な内容であり、実際に自身の修士論文にあたるプロジェクトのビジネスプランにおいても企業価値の算出や投資判断の指標としても活用しました。
 IMでの学生生活を振り返ると、入学当初は学業と仕事の両立に苦慮しましたが、それ以上にこれまで知らなかったことを学び、新たな知見を得られる時間はかけがえのないものでした。社会人になるとバックグラウンドや年齢が異なる人とフラットな関係で出会い、議論を交わす機会はなかなか無いと思います。また、企業経営をしていくうえで、他者の様々な立場や考えを理解し、「俯瞰力」を持つことは非常に重要であると思います。長年同じ環境に身を置いていると、無意識のうちにバイアスがかかり視野が狭くなりがちです。このことを自身、他者においても同様に起こることと意識して何回も真摯な議論を重ね、最適解を見つけ出すことを繰り返していく中で、意見の相違からも新たな気づきや学びがあることを実感できるようになりました。私はこういった多様な意見が創出される場が、イノベーションの源泉ではないかと感じています。そしてこのイノベーションの源泉であるIMで得た学びは、今後事業を受け継ぎ経営者として社会に還元していきたいと考えています。

IMは私にとってのサードプレイス

武笠 直子 さん 2022年度修了 (2年制)
埼玉県出身。慶應義塾大学商学部卒業。2007年4月株式会社みずほ銀行入行、現在に至る。新卒で就職した銀行では、郊外店、都心店で個人向けのコンサルティング営業を経験。直近は本部部署にて、担当先企業への複利厚生に関する金融サービスの企画提案や、金融経済教育に関する社内セミナーの講師を務める。また、同企業役職員から資産運用や住宅ローンの個別相談対応を行っている。

 大学時代はあまり優秀な成績とは言えませんでしたが、卒業論文作成のための研究活動がとてもおもしろく熱中できたことや、ゼミの教授が社会人向け大学院を卒業されていたことから、銀行に就職後も漠然と、「いつか大学院で勉強がしたい。」という気持ちを持ち続けていました。
 30代のうちに大学院を卒業しようと思い、社会人向け大学院のオープンキャンパスや模擬講義に複数参加しました。最終的にイノベーション・マネジメント研究科に決めた理由は、シラバスを見ながら時間割を想像した際に、最も通いたい大学院だったからです。入学前から、マーケティングやデータ分析、デジタル分野を実践的に学びたいと考えていたので、関連する講義が充実しているかを特に重視しました。加えて、プロジェクト作成が必須であること、働きながらも通いやすいカリキュラムとなっていることも決め手になりました。また、他研究科の講義を受講し、自分の関心のある分野を深く学ぶことができる点も法政大学大学院の利点だと入学後に感じました。
 どの講義からもたくさんの学びを得ましたが、特に印象に残っている講義は、入学後すぐに受講した「ビジネスリーダー育成セミナーⅠ」です。米倉先生が「グループシンキングではイノベーションは生まれない。ダイバーシティシンキングからイノベーションは生まれる。」とおっしゃっていたことが強く印象に残っています。職場では同じようなキャリアの人が多く、だから無難で偏った意見しか出てこないのではないかと気づきました。大学院は、日本人学生のバックグラウンドも多種多様ですし、留学生のみなさんもいます。その中で議論を繰り返すことで、イノベーションが生まれるのだということを今改めて実感しています。また、2年生からのゼミでは、具体的に自分のプロジェクトを進めることができます。私は、実際にアンケートを取得しデータの分析を行うなど、より自分の専門性を高める研究を行う事ができ、プロジェクト完成時には、これまでにない達成感を味わうことができました。研究成果を論文にまとめたことで、今後の目標をより明確にすることができました。
 今後は、「金融×マーケティング×データ分析」をテーマに、勤務先にて金融サービスの企画立案に携わり、顧客へよりよいサービスを提供していきたいと考えています。また、プロジェクトの研究内容を学会へ投稿するなど、自分なりの研究を続けていきたいと考えています。

IMで得た知見とスキル、人間関係は一生もの

齊藤 眞 さん 2021年度修了 (2年制)
東京都出身。1983年、法政大学経済学部卒業後、総合物流企業に入社。都内営業所で10年勤務後に本社に異動し欧州アフリカ地域担当となり、その後1997年から2003年まで英国駐在し、帰国後は顧客対応コンサルティング部門を統括。在任中は大阪で大手家電メーカーのグローバルVMIプロジェクト対応等をした後に2009年から香港法人社長に。2012年から中国法人グループ統括社長兼東アジア本部副本部長、2015年より東アジア本部長、2018年から情報システム部門長を兼務し2019年に帰国後CIOとしてグループIT部門を統括。

 ビジネスキャリアも終盤を迎え、大学時代の友人である山崎教授に「知見と知識の再整理を兼ねて大学院にて学び直したいという」意向を伝えてアドバイスを貰ってきました。海外の赴任先から一時帰国した際は、彼が師事した玄場教授にお話を伺う場をセッティングしてもらいました。お話を伺う中で、さまざまな事象について的確かつ明確にコメントされる玄場教授の指導を是非受けたいと思うようになり、IMの公開授業や進学説明会にも参加しました。
 1年制、2年制およびGMBAと3つのコースが選べる点や、プロジェクト・メソッドを通じて、より実践的に学べる点に魅力を感じたこと、また母校でもありましたのでIMを単願志望することを決めました。
 入学後、講義はオンライン形式が主となりましたが、登校せずとも受講できるので仕事との調整がつけやすく、自分の関心や興味がわく講義は他の研究科も含めて積極的に履修することができました。政策創造研究科はIMの他の学生とは異なるバックグラウンドを持つ学生が多く、GMBAの留学生もまた異なる視点や知見を持っており、彼らと議論できたことはとても勉強になりました。
 IMでの学びの集大成はプロジェクトにあります。アブストラクト(要約)はA4用紙2枚でプロジェクトの概要を示すものですが、内容を凝縮しつつ、より分かりやすく伝わりやすいものにするため毎週のように玄場教授に助言をいただき、推敲を重ねました。精度をあげていくことでプロジェクトの方向性が明確になり、それが発表資料やポスター、報告書に繋がっていきます。最終報告会のあとに学会発表の場も得られ、学びを深めることが出来ました。
 先生方は毎年、多様な学生の指導を行っています。そんな経験値の高い先生方が、ゼミの枠を越えての相談や質問を受け入れてくださるのもIMの特徴のひとつだと思います。臆することなく質問をぶつけることで、的確なアドバイスを受けることが出来ました。
 専門分野に留まらず、広範知識と見識を持つ教授陣と多彩なバックグラウンドを持つ学生が集まるIM。ここで学び、交流を深めることで、知見が広がるだけでなく自分の考えを明確にし、それを他者に簡潔に説明する能力が鍛えられます。新たな知識を貪欲に追求し、自身の成長を促すために学び続ける。異なる考え方や知見を持つ他者を尊重し、相互理解を深めつつ共通の課題に対して最適解を出す……。それらの繰り返しで得られた知見とスキル、そこで培った人間関係は一生ものです。

創発の場としての多様性がイノベーションを生む
「自らの意志と責任」で社会課題を解決するための一歩を

小平 裕 さん 2021年度修了 (MBA特別プログラム)
神奈川県鎌倉出身。リクルート、ビザスクでの新規事業開発の経験を経てデザイン・アプリケーション開発を行う(株)サファミーを創業。経営に必要なスキルの体系的な学習と自社の新事業のアイデア創出のためイノベーショ ン・マネジメント研究科入学。ビジネスプラン型優秀プロジェクト賞受賞。

 IMへは「プロジェクト・メソッド」の魅力に惹かれて入学を決めました。学生は1年間で、「世界で戦えるオリジナリティに富むビジネス」を目指して事業を創っていきます。 
 私は、「0から1を生み出す過程」には以下の2つが必須だと考えています。ひとつは創発を生む環境(日常的に接する組織や人、受発信する情報の多様性=カオス)。もうひとつは、時間の経過と共に必ず生じる事業のピボット(方向転換や路線変更)に耐えうる起業家自身の精神面も含めたゆるやかな長期支援です。
 その点、本専攻はバックグラウンドや志向性を持った教授陣やゲスト講師、学生との議論や学びの機会を得られる環境がある上、自身のアイデア創出に対して本気で向き合ってくれる指導教授と二人三脚で事業創りを行う「教育機関としての方針」に魅力を感じました。
 特に影響を受けたのは、「ビジネスイノベーター育成セミナー」と、「アントレプレナーシップ論」です。普通に生活していたらお会いする機会のない業界を牽引するリーダー達へのプレゼン・質疑応答といった貴重な機会が得られました。講義はただ“受信”するだけでは学習の幅に限りがあるので、話者が数十年かけて培ってきた知見の結晶をタテマエではなくホンネとして理解するため、「今日はどんな質問・会話をしてホンネを引き出すか?」を意識して挑みました。調べものの過程で自然と学生や学外との議論が進み、準備を楽しんでいる自分がいました。
 生み出したアイデアは在学中に幾度もの方向変換を経て方向性が決まり、現在は自社の新事業としてアプリ開発を進めています。IMでの学びがそのまま事業の進捗に繋がっていること、さらには、ここで得た指導教授や学生との関係性が卒業後も継続していくことが教育機関で学ぶことの醍醐味と感じています。また、良質な学習や関係性には長期視点で高い複利がかかるとも実感しています。
 事業はひとりの優秀な人間が創るのではなく、いかに多くの人に共感してもらうかが重要です。そこで、「人として誠実であること」「未来を語り続け、挑戦し続けられるか」など、ここで得た多くの学びは今後の大きな糧になると考えています。
 起業家としては、都市部を中心に増加の一途を辿るストレスや不安愁訴人口の増加を社会課題と捉えユーザーの心理状態(感情、気分)を計測し、心模様に合わせて情緒的な気分になれる行き先を紹介、提案する気分転換アプリ「Mood」を開発。卒業後はPlug and Play、行政のプログラムなど複数採択され、モビリティ関連業界に向けた連携を推進。

IMの学習環境が成長速度を速めてくれた

楊 銀瀑さん 2021年度修了 (2年制)
中国咸阳市出身。咸阳師範大学にて応用心理学を学ぶ。大学卒業後は実家が経営している学習塾の会社に3年間勤務。そこでは生徒募集や各クラスに対する全体の管理や生徒保護者への対応、クラスでの授業などに携わる。

 IMに入学を決めた主な理由は2つあります。ひとつはIMカリキュラムを貫く「イノベーション」というコンセプトが、「創造力があるリーダーになりたい」という私が思い描く将来像と一致していた点。ここでの学びを活かし、将来的には自社のビジネスモデルを革新し、中国教育の分野において新しいビジネスモデルを作りたいですね。
 もうひとつは、IMの先生の大部分は実際にご自身で会社を経営したり、コンサルタントとしての経験をお持ちなので、専門的な理論知識を学ぶだけでなく、ビジネス計画の構想を完成させる過程で多くの実務家のアドバイスや指導に触れることができるという点。IMの学生は皆バックグラウンドが異なり、年齢差も大きいため、このような環境で議論を行うことで、学びの深度は深まり、成長速度も速くなる点も理想的な環境だと思います。交流の中でイノベーションのヒントが出やすくなるのも大きな利点だと思います。これは、私がとても望んでいた学習環境です。
 それまでの私は経営に関する知識はほとんど持ち合わせていなかったので、1年目は経営イノベーション体系やリサーチ技法、マーケティングなどそれぞれの分野の基礎科目を中心に履修しました。一定の基礎ができた2年目には、戦略に関する専門科目を中心に履修し、卒業プロジェクトの作成に重点を置きました。
 印象に残っている講義は藤村先生の経営イノベーション体系です。経営において必要なことのほとんどが網羅されていて、私のような基礎がない人間でも頭の中に全体のイメージを構築することが出来ました。この授業が礎となってそれ以降の学習が効率的になり、目標がより明確になりました。毎週、授業のレポートを作成する際に論理的思考能力とそれを言語化し、文章化する能力も鍛えられます。おかげで、日本語で修論を完成する自信がつきました。
 特に力を入れてきた科目はプロジェクトです。毎週、思いついた観点について先生や同級生と話しながらアドバイスをいただき、豊田先生の指導の下で少しずつ完全なビジネス計画にまとめていきました。また、中期発表やポスターセッションの場では多くの先生から助言をいただき、レポートをよりよく改善することが出来ました。この過程を経ることで、手元にある資源を統合し、利用する能力の重要性を認識しました。毎回の発表ではプレゼン能力が鍛えられたと思っています。これらはいずれ大いに役立ってくれるでしょう。
 今後は、プロジェクトで提案したビジネスプランの精緻化と応用を考え、ビジネスモデルを発展させる予定です。今回、考えた華僑中文教育塾提案の実現化によって、日中両国に橋を架け、友好関係に寄与できたらと考えています。

1 年で10年分のイノベーティブな能力を修得
経営学観点からも患者にアプローチ

大嶋 浩司郎 さん 2020年度修了 (1年制)
栃木県出身。太田医療技術専門学校臨床工学科卒業後、臨床工学技士として防衛省防衛医科大学校病院に入省し、臨床・研究・災害派遣医療(日本DMAT)に従事。その後、血液透析室副室長に就任し、腎不全患者に対する人工透析治療に携わる。長期治療で苦しむ患者の現状を知り、今後は経営学の観点から患者へのアプローチも必要と判断。既存の医療従事者の立場に縛られない新しい知見やスキルを習得するためIM 研究科の門を叩く。

 私は、長年、人工透析患者の治療に携わっています。そこで見てきたのは、多くの患者が長期治療により就業などに様々な制約が発生していること。そのため日常生活は圧迫され、将来への希望を見出しにくくなっている厳しい現実でした。「これからは医学の側面からではなく、経営学の観点からも患者へのアプローチが必要となる」。そう確信し、IM 研究科で学ぶ決断をしたのです。

 現在、医療においてイノーベーションの必要性は高まっていても、それは主に技術面に集中しています。医療技術革新は素晴らしいことですが、それを扱う我々医療従事者の意識も革新的でなければなりません。今後、日本は世界に類を見ない超少子高齢化社会に突入し、国の医療費は増大する可能性が非常に高く、既存の医療経営では崩壊すると言われています。必然的に医療に携わる者には「経営の知識と患者が望む医療を的確に提供できるマーケティング分析の技術」が求められるようになっていくでしょう。しかし、普段の業務を行う上で、医学の知識は学べても他の知識やスキルを身に付けるのは困難であり、働きながら短期間で多くのことを学べる環境と実践力を身に付けられる場は多くありません。ところが本研究科は「1年で10年の差をつける」を最大のコンセプトとして掲げており、我々医療従事者のような夜勤や当直がある社会人においても、より効率的かつ集中的に学習し実践に活かせる能力を身に付けることができます。さらに、組織イノベータのみにとどまらず、日本ではまだ数少ない医療イノベータを目指す院生にとって「プロジェクト」のテーマに医療ビジネスや組織改革の課題を設定できることも大きな魅力です。私は、その課題を作り上げる過程で様々な教員と先輩や多くの起業家からアドバイスを受け、多面的視点で考えながら、新規性の高いイノベーティブな能力を磨くことができました。

 さらに、学友には様々な分野で活躍している方が多いため、新たなる刺激と知識を得ることができ、同時に互いに切磋琢磨することで、素晴らしいネットワークと人脈を構築することもできました。ここで学ぶことで、卒業後もこのネットワークと人脈を最大限に活かし、組織内改革や起業を目指す際には、具体的なアドバイスを得られるチャンスもあると手応えを得ています。

現場経験とデジタル活用技術を武器に
企業のDX を手掛けていきたい

川越 敏昌 さん 2020年度修了 (MBA特別プログラム)
大阪府出身。関西大学大学院で工学修士を取得。大手電機メーカーの産業プラント関連のエンジニアリング部門で国内外向け設備開発や建設プロジェクトに従事。業界全体が既存のビジネスモデルからDX※による事業転換を模索する中、DX をリードできる人材への転身を決意。MBA 特別コースに進学し、プロジェクトではIoT 活用によるコンクリート製品工場の生産プロセス改善の実証試験を実施。特定ビジネス課題解決型優秀プロジェクト賞を受賞。

 私は大手電機メーカーに入社してから、24 年間、半導体事業・液晶事業・化学プラント事業など国内外の様々な事業フィールドを渡り歩いています。研究・開発・設計・エンジニアリングという技術系業務だけでなく、営業、海外拠点運営、合弁会社立上げなど、技術系以外の業務も多数こなし、まさにモーレツ社員として働いてきました。しかし現在、日本の製造業には国際競争力の低下を肌で感じます。これからは、デジタル活用による事業転換が必須であるとの課題意識を持ち「自らがDX 人材への転身」を図るために、IM で学ぶことにしたのです。

 短期集中型のカリキュラムにより、集中してすべてに興味を持って取り組むことができ、多様な業務経験から経た断片的な事柄を総合的に結びつけられた実感があります。本年度はリモート中心と特殊な環境となりましたが、通学時間が少ない利点を生かし、必須科目以外でも多くの講義を受講。論理的思考力やICT 知識のさらなる強化につなげることができました。IoT、AI、画像処理といったデジタル活用技術をより自分の武器にしようと、現在も学外のオンラインセミナーで継続して学び続けています。例年なら学外の人脈形成にも注力できるのでしょうが、そこは無理強いせず、専門性を磨くことに専念。プロジェクトの成果を今後に生かそうと考え、IoT によるコンクリート製品工場の生産プロセスの改善につながるシステムを製作し、現場で実証試験まで行いました。学会への論文発表も2 件行い、実践力が求められているとの手応えを感じていますし、今後のビジネスにうまくつながっていくものと期待しています。また、1 年間という限られた時間軸の中でアウトプットを出す良い訓練ができた手応えも感じています。 もう一つ私が求めたのは、コンサルタントして独立するための実践力です。そこで診断実習、プロジェクト、各講義でのグループワークに力を入れました。幅広い年齢層と多様なバックグラウンドを持つメンバーと意見交換することで、自分にはない発想や知見に触れることができたのは、とても良い刺激になりました。同窓生との絆も深まり、卒業後の連携の場として、IM 総研のDX研究部会を発足。今後も仲間とDX 実践力を高めていく研究活動を継続していくつもりです。

「賢く失敗する勇気」と「諦めない心」
意欲的な姿勢で新しい未来を切り拓く。

金子 美愛 さん 2020年度修了 (2年制)
宮崎県出身。外資系ホテルに勤務した後、外資系生命保険会社に入社。2017 年1 月より執行役員となる。カスタマーサービス部門の担当を経て、現在は総務にて社会貢献、D&I、企業理念を担当。2019 年イノベーション・マネジメント研究科2 年制に入学する。プロジェクトでは、本ワサビの消費拡大をテーマに研究を発表。ビジネスプラン型優秀プロジェクト賞受賞。

 企業人としては、上司や部下に恵まれ幸運な人生を送っていましたが、ゆくゆくは地域や社会に役立つ事業を行いたいと考えていました。そんな時、IM は、実務経験やコンサルティング経験のある複数の教授陣から多面的な指導が受けられること、学生も経営者や企業の役員が多いと知り、2 年制での入学を決めたのです。1 年では、春学期に戦略、マーケティング、人的資源管理など基礎科目を中心に受講し、夏期集中や秋学期で専門科目と応用科目を選択。2 年では、プロジェクトに生かせる科目を中心に学びました。その中でも影響を受けたのは、小川教授のビジネスイノベーター育成セミナーです。その後のゼミでの指導も通して、自分自身の価値観を見つめ直し、自分らしい独自のリーダーシップとは何かに気付くことができたと感謝しています。

 実践面のプロジェクトでは、村上教授のスタートアップ戦略論で「早く・安く・賢く失敗する大切さ」を学んだことが大きいですね。中間発表の頃、解決策に行き詰まっていた私は、村上教授に「インスタで売ってみたら?」とアドバイスをいただきました。仕事でも感じたことのない不安に襲われながら「失敗することを躊躇してはいけない」と、EC サイトを構築しSNS 広告を作成。年末年始の休みを返上してテストマーケティングやインスタグラム更新を行ったことで、熱意が生産者に伝わり「ここまでやってくれる人はいない」と言われ、事業化を決心できました。

 現在、国産本わさびの普及を目的とした一般社団法人設立の準備をしています。定款の作成やウェブサイトの構築では、本科で出会った同期や先輩方からもアドバイスを頂き、構築先も紹介いただいています。日本の食文化の形成に重要な役割を果たしているわさびですが、その美味しさは消費者に十分に伝わっていません。本物のわさびは、まろやかな甘味があり、その後にすっとした辛味が鼻に抜け、食材の持ち味を引き立て、料理の味に深みを与えます。私は、食べる人と作る人をつなぎ、多くの人が本わさびを楽しみ、豊かな食生活を楽しめるサービスを提供していきたい。「意欲を持ち最後まで諦めずに取り組めば、新しい未来を切り拓くチャンスはきっと得られる」このIM で得たこの確信が、私の原動力となっています。